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ブランディング戦略とは?|ブランディング探訪シリーズ (4)
前回のシリーズ Vol.3では、複数のブランドを展開する場合のブランドアーキテクチャーの最適化、既存のブランドを、時代や市場の変化などに合わせて構築し直すリブランディングについてご紹介しました。今回は、ブランディング戦略における長期的な視点およびブランディングの進化と動向についてお話しします。
ブランディング戦略の長期的な視点)
ブランドの目的や価値を明確にし、それを一貫して伝えることが大切です。
ブランドは顧客に対して何を提供し、何を解決し、何を感じてもらいたいのか、ということを表現するものです。そのため、ブランドの目的や価値を明確にすれば、顧客に対して信頼感や親近感を高めることが可能です。しかしその一方で、ブランドの目的や価値がはっきりしていない場合、混乱や不信感を与える可能性もあります。
〈目的や価値を明確にする方法〉
自社ブランドの根幹となる「ミッション」(使命・存在意義)と「ビジョン」(目指す姿)を定義しましょう。ミッションとビジョンを明確にすることで、ブランドの目的や方向性がはっきりします。
ここで言う「ミッション」とは、「使命」と「存在意義」の両方の意味を含みます。また「ビジョン」とは、企業が掲げる目的や目標であり、企業が社会に対してどのように貢献していくのかを示す重要な指針となります。
「ミッション」の類義語に「パーパス」があり、どちらも本質的な意味としては「存在意義」と訳されますが、ミッションが「企業やビジネスの目的・目標・方針・手段」を表すのに対しパーパスは「企業やビジネスの社会的意義と存在価値」を表す点に違いがあります。
言い換えれば、ミッションはパーパスの実現に向けた戦略であり、行動指針であるとも言えるでしょう。ミッションは「What(何をするのか)」に対する答えであり、パーパスは「Why(なぜやるのか)」に対する答えです。またどちらかと言えば、ミッションはビジネスパーソン向けの言葉ですが、パーパスは一般的にも親しまれ受け入れられるパーソナルな言葉となっています。
ミッションやビジョンを定義するには、以下のような手順を参考にしてみましょう。
1. 事業内容や創業の想い、経営理念の整理
事業内容や創業の想い、経営理念は、企業が存在する理由や目的を示したものです。これらを振り返り、現在の時代や社会の流れに合っているかを確認しましょう。
2.自社の強みや弱み、機会や脅威の分析
自社の内部環境と外部環境を把握するために、SWOT分析というフレームワークを使ってみましょう。SWOT分析では、自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を整理します。これにより、自社が提供できる価値やニーズへの対応策が明らかになります。
3.真のコアターゲットを選定
コアターゲットとは、自社のブランドに共感し、企業やブランドが大切にしている価値を支持してくれる人たちのことです。ブランドのファンやパートナーと言い換えることもできるでしょう。コアターゲットを選定することで、ブランドが誰に向けて何を伝えたいかを明確にできます。
4.ミッションとビジョンを可視化し、簡潔でわかりやすい言葉にする
ミッションとビジョンは、ブランドが目指す姿や目的を表現するものです。
そのため、ミッションとビジョンを可視化することができれば、ブランドの方向性や意義を周囲に伝えることができます。この際のミッションとビジョンは、具体的で実現可能なものであることが重要です。曖昧なものや実現の的でないものは、社内外から信頼されにくくなります。
- ブランドの強みと差別化の点を強調しましょう。
ブランドとは、競合と比べてどのような強みや差別化の点があるのかということを示す役割を持っています。しかし、自社のブランドの強みや差別化の点をわかっていなければ、顧客に対して魅力や選択理由を伝えることができません。ブランドの強みや差別化の点を見つけ強調することで、顧客に対して優位性や付加価値を訴求することができます。
- ブランドの評判や評価をモニタリングし、フィードバックを活用する。
ブランドは、顧客からどのように評価されているのかということを常に反映していかなければなりません。ブランドの評判や評価がわからなければ、顧客のニーズや満足度を把握するのも難しくなります。それらをモニタリングすることで、顧客からのフィードバックを得るようにしてください。フィードバックは、ブランドの改善点や新たな可能性を発見するための重要な情報源であり、それらを活用することでブランドをより良くすることができます。
ミッションやビジョンの設定は、ブランディングだけでなく、すべての戦略の根幹になります。自社の強みや競合との差別化、顧客のニーズおよび満足度、評価、改善策などを常に考えていくことが必要です。長期的なブランディングにおいては、これらアクションを継続して行うことが基本となるでしょう。常に基本に立ち返り、自社に相応しいブランディング戦略を継続させることがブランドの成長には欠かせません。
ブランディングの進化と動向
ブランディングとは、自社の商品・サービスの価値を顧客に伝えるための戦略です。しかし社会や市場の変化に伴い、ブランディングの意味や方法も変化してきました。
その最たるものがデジタル技術の発展です。情報化社会が急速に進み、顧客とのコミュニケーションや情報収集が多様化したことで、さまざまなデジタルメディアを活用したトータルな体験を提供することがブランディングにおいて可能となりました。この動向は今後もさらに加速する可能性が高いと考えられます。
社会の変化や価値観の多様化により、顧客がブランドに求めることも変わってきました。「自分が共感できるブランド」から「自分と共感できるブランド」へとシフトしているように見えます。
「自分が共感できるブランド」とは、ブランドの価値に賛同し、その体験に満足し、好意的な感情を持ち、忠誠心や信頼感を抱くブランドのことです。しかしこの場合、両者の関係性は顧客とブランド提供者の関係に留まる可能性があります。
一方で「自分と共感できるブランド」とは、信頼感を超えた行動として、ブランドの一部として自分を表現したり、自分の人生に関連付けたり、ブランドに対して愛着や帰属感を持ち、ブランドの価値観やビジョンを自分のものとして受け入れ、顧客自身がブランドの情報発信者となるブランドのことです。この場合、両者の関係性はパートナーや仲間のレベルに達する可能性があります。
端的に言えば、「自分が共感できるブランド」は「このブランドが好きだ」という思いですが、「自分と共感できるブランド」は「このブランドは自分そのものだ」という思いです。前者は理性的な共感であり、後者は感情的な共感です。前者は消費行動に影響を与えますが、後者は生活行動に影響を与えます。
コロナ禍がブランディング戦略に与える影響
コロナ禍によって、人々の生活や消費行動は大きく変化しました。それに合わせてブランディングも、新しいニーズや価値を捉えて柔軟に対応することが求められるようになりました。
ブランディングは社会の変化に応じて、進化し続けるものです。ブランディング戦略を立てる際には常に顧客の視点を持ち、市場や環境の動向を分析し、自社の強みや差別化を明確にすることが重要です。そして、変化に柔軟に対応できるように心がけていくことも忘れてはいけません。
コロナ禍によって、ブランディングはこれまで以上に商品やサービスの特徴・機能・コミュニケーションだけでなく、企業の理念や目的・存在意義(パーパス)を明確に伝えることが求められるようになっています。
今回は、「ブランディング戦略における長期的な視点」および「ブランディングの進化と動向」についてお話ししました。次回は、企業の本質的な存在価値を追求する、ブランディングメソッドの「パーパスブランディング」についてお話しします。
※そのほかブランディングに役立つ、以下の記事も一緒にご覧ください。
・ブランディング探索シリーズ 第1回 ブランディングの必要性とは?
(ビジネスに欠かせない要素)
・ブランディング探索シリーズ 第2回 ブランディングとは?
(ブランディングの基本要素とその意義)
・ブランディング探索シリーズ 第3回 ブランディングアーキテクチャーの最適化
(ブランドの階層を整理し、ブランドポートフォリオを最大限活用する方法)
・ブランディング探索シリーズ 第5回 パーパスブランディングについて
(本質的な存在価値を追求するブランド戦略のメソッド)
■関連記事
10分から始められるパーパスブランディング|フレームワークをご紹介