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ビジネスがますます競争激化する中、企業が成功を収めるためには、顧客との深い関係を築くことが不可欠です。そして、顧客との深い関係を築くためには、顧客が何を求めているのか、どのように解決を求めているのかを徹底的に理解しなければなりません。そこで重要になってくるのが、ペルソナ設定です。本稿では、ペルソナ設定がなぜ重要なのか、また作業を具体的にどのように進めるべきかについて、詳しく解説します。
ペルソナとは(ペルソナの概論)
ペルソナとは、心理学用語を基にしたマーケティング用語で、サービスや商品の典型的なユーザー像を指して使われる言葉です。そのユーザー像は、年齢や性別などはもちろん、居住地や職業、その役職や年収、さらには趣味・特技、価値観や家族構成、生い立ちや休日の過ごし方に至るまで、リアリティのある詳細な情報を設定していく点に特徴があります。
なぜペルソナを設定するのか?
ペルソナ設定は、顧客の心の奥深くに触れるための重要な役割を果たします。そして、データや情報だけではなく、顧客の思考や感情を理解し、それに基づいてコミュニケーションを構築することは、顧客からの信頼獲得につながり、競争優位を築く礎となります。だからこそ企業はペルソナを設定し、顧客をより深く理解していく必要があるのです。
ターゲットとペルソナの違い
ペルソナの類義語として、ターゲットという言葉があります。ペルソナとターゲットは、マーケティングにおいてよく使われる言葉ですが、両者の意味は必ずしも同じではありません。ターゲットは、自社の商品やサービスを販売したい顧客層を、市場のセグメント化に基づいた大まかな属性として指している言葉であるのに対し、ペルソナは特定の人物像を具体的に描写する言葉です。
ここにペルソナとターゲットとの大きな違いがあります。ペルソナはターゲットをさらに深く理解し、人間性にアプローチするためのツールだからです。ペルソナを設定することで、ユーザーのニーズや課題をより具体的に把握し、より効果的なマーケティング施策を実施することが可能になります。
ペルソナ設定のメリット
ペルソナ設定には多くのメリットがあります。例えば従業員全員が共通の理解を持つことにより、ユーザー視点でのコンテンツ制作が可能になったり、コンテンツの方向性が統一されることで仮説検証が容易となり、結果的には時間とコストの削減につながったり、さらにはマーケティング戦略の方向性を明確にすることで、顧客との深い関係を築く基盤としても活用することができます。
マーケティング戦略とペルソナ
ペルソナ設定は、マーケティング戦略の中で効果的なコミュニケーション戦略を展開する鍵となります。 ペルソナ設定によって、理想的な顧客像を明確に描き出し、性別や年齢、職種などの基本的な属性だけでなく、企業情報や職務内容、心理的な特性、定量的な行動傾向などを具体的に浮かび上がらせることが可能になるからです。これはまさに人物像の視覚化と言っても過言ではありません。
この視覚化を通じ、そのペルソナの思考や性格、心理状態、行動パターン、購買傾向などを把握できれば、それに基づいたタッチポイントやペルソナに適したアプローチを想定することができるようになります。そこから、一方向的な情報提供だけでなく、相手の意見や感情に耳を傾け、相手の視点や考え方を尊重し、自身の意見を共有していけば、相互の理解を深めてより正確な情報を提供することができるでしょう。
これは、関係性を強化することにつながる双方向の良質のコミュニケーションであり、効果的なコミュニケーション戦略の実現へと繋がります。こうしたアプローチは、顧客や消費者との共感と信頼を築くための基盤として非常に重要なファクターです。
ペルソナ設定の手順
ここからはペルソナ設定の手順について見ていきましょう。以下に紹介する手順は、顧客に対する深い理解を築くためには欠かせないものです。
〈データの収集〉
まず始めに、顧客に関するデータを収集します。購買履歴、アンケート結果、行動分析データなどを収集し、客観的な情報を得ます。これらのデータを基にして顧客の嗜好や行動を把握することが、効果的なコミュニケーション戦略の基盤となります。
〈情報の整理と対象のセグメント化〉
収集したデータを整理し、共通の特徴やニーズに基づいて顧客をセグメント化します。これにより、大量の情報から重要な洞察を引き出すことができ、それに基づく戦略が展開できるようになります。
〈インサイトによるペルソナの具体化〉
セグメントごとに、さらに深く顧客のインサイトを掘り下げます。そのインサイトをもとに、架空の人物としてのペルソナを創出します。これによって、ペルソナは単なるデータの羅列ではなく、実在の人物のように感じられるようになります。
〈ストーリー化〉
ペルソナを生き生きと描写することで、実在の人物のごとく感じられるようにしましょう。その背景や目標、課題をストーリーとして織り交ぜることで、より共感を呼び起こし、顧客の心に響くコミュニケーションが可能となります。
ペルソナ設定のサンプル
以下に、具体的なペルソナ設定のサンプル例を示します。
〈基本属性〉
・名前:山田 太郎
・性別:男性
・年齢:30歳
・職種:プロジェクトマネージャー
・役職:主任
・年収:550万円
・学歴:私立大学卒
・居住地:東京都
・家族構成:既婚、1児の父
〈企業情報〉
・業種:ITコンサルティング
・企業規模:中規模企業
・売上:100億円
・市場成長トレンド:デジタルトランスフォーメーション分野で成長中
・所在地:東京都渋谷区
・企業カルチャー:自由な雰囲気でアイデアを重視
・業界内ポジション::中堅のプレイヤー
〈職務情報〉
・主な業務内容:プロジェクトの進捗管理、クライアントとのコミュニケーション
・業務上のゴール:プロジェクトを成功に導き、クライアントの期待に応える
・ゴール達成を阻む課題:プロジェクトメンバーのコラボレーション不足
・追っているKPI:プロジェクトの納期と予算
・購買プロセスの役割:提案・選定の段階で関与
・決裁権の有無と決裁の範疇:決裁権なし、予算の承認は上司が担当
〈定性情報〉(心理傾向)
・性格:責任感が強く、コミュニケーション能力も高い
・興味・関心事:プロジェクトの成果に集中し、自己啓発とスキルアップを追求
・プライベートでの悩み:多忙なため仕事と家庭の両立
〈定量情報〉(消費・購買傾向)
・購買動機:プロジェクト成功のために必要なツールやソフトウェアを選定
・良く行くお店・エリア:駅周辺のカフェや家族で行くファミリーレストラン
・趣味:週末にフットサルや家族で遊園地、ショッピングを楽しむ
・好きなブランド:ニューバランス、アップル
・支出の多い分野:キャリアアップのためのセミナーやトレーニング
まとめ
ペルソナ設定は、顧客の理解を深め、効果的なコミュニケーション戦略を展開するための重要なプロセスです。チームメンバーや関係者からのフィードバックを収集し、顧客の属性や行動、価値観などを精緻に描き出します。これにより、顧客との共感を高め、ビジネスの成功につなげることができます。ペルソナ設定は、マーケティングのみならず、顧客理解と効果的なコミュニケーション戦略の鍵となるため、積極的に取り組んでいきましょう。