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企業やブランドの本質を視覚化するVIの制作のプロセスとは。
ビジュアルアイデンティティ(VI)とは?役割や効果を解説の続きです。
企業やブランドの本質を視覚化するVIの制作
顧客や消費者に言葉だけのコミュニケーションで「企業らしさ」や「ブランドらしさ」を興味・共感・理解してもらうことは容易ではありません。一般的に言語情報より視覚情報の方が、受け手が得られる情報量の割合が高いと言われています。
VIは、MIの視覚化です。デザイナー(コーポレートデザイナー)は感性やデザイン感覚だけでVIを制作しているのではなく、企業やブランドの本質を捉えるために、企業サイドにヒアリングを重ね、企業やブランドの歴史・商品・サービスの変遷・市場・競合のリサーチ・消費者のニーズなどの情報を収集し、客観的に分析・検証・整理します。
そうしたプロセスを経て、デザインコンセプトを設計し、デザインの方向性を練り、幾案もデザインの方向性を絞り、大まかなデザインを基に企業の方々と検証し、デザインの手法を決め、段々とデザインを完成に近づけます。デザイナーは制作の多くの時間を企業やブランドの本質を探ることに費やし、企業らしさやブランドらしさを追求し、オリジナリティを求めています。
VIの制作は、まず言語化から
デザイナーは、いきなりデザインするのではなく、企業らしさやブランドらしさを追求するために、企業へのヒアリングや情報を収集し、それらの分析・検証・整理をします。そこから企業やブランドの思いを汲み取り、それを自分の言葉で言語化します。
言語化できていないようなら、まだ本質まで捉えられていないことの証なので、最初のキーワードの設定からやり直します。言語化できたら、客観的な視点で固定観念や不必要なものは削る作業を行い、贅肉を削ぎ落した筋肉質なデザインコンセプトを作成します。そのデザインコンセプトを基にデザインの段階に入ります。
デザインの手法を選定し、それから完成を目指してデザインを進行しますが、初期の段階での企業らしさ、ブランドらしさの定義を「言語化」するプロセスは、ものの本質を掴み、それを伝えるためのデザインワークに非常に重要になります。
視覚的イメージの展開を統一し、伝えることの大切さ
企業やブランドのシンボルマークやロゴのデザイン(世界観)が、タッチポイントとなるあらゆる場所や時間で、その都度変わっていると、企業やブランドの印象もその度に変わりますし、ブランド認知も望ず、CIやブランディングの意義がありません。それまでのブランドストーリーを破壊する行為です。
発信するすべてのものに、一貫した視覚的イメージ(世界観)を持たせた展開を行うことで、はじめて認識してもらい、そこから企業らしさ、ブランドらしさの世界観へと導くことが可能になります。ブランディングは受け手によってブランドが形成されますので、視覚的イメージの展開を統一して伝えることはとても大切です。
VIの開発フェーズ
これまでは、CIやVIの概要の要の部分でしたが、ここからはオリエンテーション・ヒアリング・現状の調査と分析・コンセプト設計後のVIの開発フェーズの要点に触れていきたいと思います。
開発フェーズは、シンボルマークやロゴといったVIの中心となる「デザイン要素開発」から、VIの正しいコミュニケーションができるように、運用を規定した「デザインシステム開発」(VIマニュアル/ロゴマニュアル)、シンボルマークやロゴといったベーシックデザイン基に、企業の名刺、封筒、広報ツールなどのアイテムを制作する「アプリケーション開発」が主となります。
デザイン要素の開発
前出したようにVIのデザインは、感性や感覚で決めているものではなく、MIを視覚的に表現することです。具体的には、言語化された企業らしさやブランドらしさのイメージに合う世界観を視覚的に表現するために、構成する個別的なデザイン要素をそれぞれに検証したうえで系統的に統一し、ビジュアルに落とし込んでいきます。
大まかなデザイン要素としては「ビジュアルイメージの勘考」、「イメージカラーの設定」、「推奨フォントの検討」、「デザインイメージの展開」があります。
ビジュアルイメージの勘考
企業らしさやブランドらしさのイメージを、ビジュアルに落とし込む方法はいろいろあります。例えば、デザインする前に、求める企業らしさ、ブランドらしさの世界観を表したコンセプトに合わせて複数のイメージ写真を用意し、それをコラージュしていきます。そして言語化されたコンセプトとコラージュされた写真を見比べて、どのような表現が最適かを熟考します。
イメージカラーの設定
企業らしさやブランドらしさをビジュアル化する際に、イメージを印象付けるのに色(カラー)は重要です。科学的には解明されていませんが、色のイメージは、心理的に影響を及ぼすといわれます。
例えば「赤色」は熱い・情熱的・エネルギー・派手などのイメージがあり気分を高揚させ、「青色」は冷たい・クール・スッキリなどのイメージがあり冷静・孤独感・クールダウンさせるなどの心理的効果を及ぼすといわれます。その企業らしさやブランドらしさに沿った色を選ぶことは大切です。
推奨フォントの検討
企業らしさやブランドらしさの表現において、フォント選びも大切です。曲線的でやわらかい感じがするフォント・細く直線的で幾何学的なクールな感じがするフォント・太い線で堅い感じがするフォント・また、子供向け・女性向け・レトロ風・手書き風など、それぞれにイメージがあります。企業やブランドのイメージを損なわない推奨フォントを検討し提案します。既存のフォントではなく、オリジナルのフォントを使用する場合もあります。
シンボルマークやロゴデザインの制作
シンボルマークやロゴは、フォルムやカラーを調整して洗練させる「リファイン」と、まったく新しくつくりなおす「リニューアル」があります。時代や社会情勢の変化とともに、シンボルマークやロゴをリニューアルする企業も増えてきました。企業らしさやブランドらしさ(思い・価値)を可視化したのがシンボルマークやロゴで、それはVIの中心でもあり、長く使用するものです。揺るぎない最適なシンボルマークやロゴにしたいですね。
デザインイメージの展開
つくられたシンボルマークやロゴは、名刺・封筒・広告・販促物などさまざまなツールに展開されます。重要なのは展開するツールが、一貫したイメージ(世界観)で統一され、市場や社会に浸透していくことです。それにより、企業らしさやブランドらしさを感じてもらう際に、正しいコミュニケーションが成立します。一貫した世界観の統一展開は、企業活動を円滑にする作用があります。
視覚調査、商標調査
ロゴ制作には、大きく2つの特徴的な工程があります。ひとつは「視覚調査」、そして「商標調査」です。
視覚調査(Visual Audi/ビジュアルオーディット)は、消費者のグループインタビュー、経営者や業務を実施している社員などの社内アンケートなどによって、既存ブランドロゴの使用状況やブランドの認知度・強み弱み・ロイヤリティなどのブランドの実態を把握します。調査実施のタイミングは、VIの制作に取りかかる際に行います。
人への調査以外に各種広告・各種印刷物・各種コーポレートアイテム・サイン・Webなどを点検し、問題や展開上の制約や条件などを把握します。また、UX(User Experience/ ユーザーエクスペリエンス)視点での検査や、競合に後れを取る原因や競合との違いを浮き彫りにし、ブランド意識と現状との隔たりを明確にします。
商標登録(Trademark Registration/トラッドマーク レジステーション)は、企業名・商品名などとセットで商標登録し、商標権が付与されます。長く使うものですので商標権侵害のリスクを回避するためにも商標登録し、使用するようにします。尚、商標出願から商標登録までにかかる時間は出願状況の混み具合により、半年から約1年程度かかります。
ロゴやマークなどの精緻化
「精緻化」(せいちか)とは「より精緻な状態にすること」を意味し、より細かいつくりにすることやより詳しくすることを指して用いられます。「細かい点まで努力を尽くし、さらに優れた状態にする」というニュアンスでも用いられる表現です。(TRANS. Biz ビジネスワード 日本語表現 「精緻」の意味と使い方とは?ビジネス例文解説と類語・対義語より)
ロゴ制作において、非常に重要な作業のひとつである「精緻化」は、専門の知識と経験がモノをいう領域です。
ロゴのタイプ
ロゴは、シンボルマーク・ロゴマーク・ロゴタイプを含めた総称の意味でも使われます。企業やブランドの象徴的な存在でイメージを印象付けます。優れたロゴは個性を放ち、記憶に残りやすく、デザインの意味も素早く伝達されます。
代表的なロゴのタイプは以下の通りです。
・ロゴマーク:シンボルマーク+ロゴタイプの組み合わせ
・ロゴタイプ:図案化した文字列のロゴ(社名・ブランド名・商品名・サービス名などのロゴタイプ)
・シンボルマーク:企業、団体などを象徴する図案
・ステートメントロゴ:ステートメントをロゴ化したもので、ロゴマークやシンボルマークと組み合わせて使います
デザインシステム(VIマニュアル)の開発
デザイン要素開発と同じく、必要不可欠なのが「デザインシステム開発」です。VIマニュアルやロゴマニュアルとも呼ばれ、ロゴやマークをはじめとるデザイン要素や、アプリケーション各アイテムを展開する際に、一貫性のある価値ある正しいコミュニケーションができるように、基本的な使用ガイドラインの基準を定めたルールブックです。
CI戦略にはデザインシステム(VIマニュアルは)必須です。
昨今ではスマートフォンでのスクリーン対応のガイドライン項目もあります。主な構成要素としては以下があります。
・基本形の設定(基本デザイン要素)
・カラー設定
・保護エリアの設定(アイソレーション)
・最小サイズの指定
・指定書体(推奨書体)
・使用禁止例(誤用例)
・スマートフォンスクリーンガイドライン
・Webガイドライン
・アプリケーションデザインの規定 など
マニュアルは、掲載内容のボリュームによって、数ページから数百ページとさまざまです。作業期間も内容によって1週間程度~2年程度と変わってきます。
アプリケーション要素の開発
アプリケーションの開発というと、ソフトウェアの開発と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、この場合の「アプリケーション」とは、さまざまなツールを指します。代表的なものでは、名刺・封筒・社章・腕章などがあります。
企業やブランドの一貫した世界観を社内外に示すため、マークやロゴのベーシックデザインを元にして具体的なアプリケーションのデザインを展開します。アプリケーションの対象は以下のように幅広いツールです。
名刺/封筒/ペーパーバック/Webサイト/プレゼンシート/テンプレートなど
- ・広告/広報(会社案内/プレスリリース/商品カタログ/ノベルティなど)
- ・Webサイト(コーポレートサイト/ブランドサイト/サービスサイト/採用サイトなど)
- ・サイン(塔屋看板/袖看板・突出し看板/自立看板/スタンド看板/タワー看板など)
- ・環境/店舗(オフィス/工場などの施設の内外観のイメージ)
- ・輸送用機器(営業車両/輸送車両/重機車両/船舶/航空機など)
- ・ユニフォーム(服/社章/帽子/腕章/ワッペン/ネクタイなど)
- ・ノベルティ(カレンダー/クリアファイル/ボールペン/タオル/エコバッグなど)
まとめ
VI(ビジュアルアイデンティティ)は、CI(コーポレートアイデンティティ)の要素です。企業やブランドの価値を可視化し、その価値の本質を正しく伝えることを目的としています。また、ブランドづくりにも欠かせない、とても重要なものです。
時代に沿ったVIもあれば、時代に左右されず江戸時代から脈々と続き、ゆるぎない安心感と信頼関係を築き上げたVIもあります。それらにも最初の一歩があったはずです。
確かな一歩を踏み出すことは大切です。
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