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現役デザイナーたちが語る、ゲームから得た学びと今後の展望
UXデザイナー
小林秀彰
プログラマー
薄葉柾人
グラフィックデザイナー
新田川大樹
近年、老若男女問わず多くの人々が楽しむようになったビデオゲームやスマホゲーム。美麗な映像や緻密なストーリー、アッと驚く遊びのアイデアなど、芸術作品と言っても差し支えのない作品も少なくありません。そうしたゲーム体験は、デザイナーたちにどのような影響を与え、彼らの仕事へと繋がっているのでしょうか。
今回は3人のスタッフに集まってもらい、ゲームとの関わりやゲームから得た学びについて、対談を行ってもらいました。
小林秀彰(IDEAL所属)
BtoBおよびBtoC領域での幅広い経験を持つUXデザイナー。
ユーザー中心のデザインを重視。ユーザーの立場に立って、直感的に操作できる使いやすいプロダクト作りを目指している。最近プレイしたゲームはバルダーズゲート3、ユニコーンオーバーロード。
薄葉柾人(ZERO所属)
たき工房(現:たきコーポレーション)2020年新卒入社。プログラマー。東京工芸大学卒業。3DCGやWebの技術を用いてAR、インタラクティブコンテンツ、Webアプリの開発に携わっている。趣味は3Dプリンターでの造形作品制作。
新田川大樹(ONE所属)
たき工房(現:たきコーポレーション)2020年新卒入社。グラフィックデザイナー。金沢美術工芸大学卒業。主に広告制作に携わる。趣味で3D制作や、プログラミングを学習中。
ゲームとの出会いで感じた衝撃
小林:忙しい中ありがとうございます。今日は「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」※にちなんで、皆さんとゲームとの関わりについて話を伺いたいと思って、集まっていただきました。まずはお二人のゲームとの出会いについて、教えてもらえますか?
※こちらの企画展は終了しました。
新田川:最初にゲームに触ったのは、友達の家のスーパーファミコンでしたね。あんまりゲームをする家庭ではなかったのですが、なぜか祖父が懸賞で当てたPS2だけは家にあったのを覚えています(笑)。本格的にゲームをするようになったのはニンテンドーDSからですね。マリオカートやポケモンのような、友達と遊ぶタイプのソフトが多かったです。またパソコンで遊べるフラッシュゲームにもハマりましたね。
グラフィックや全体のボリュームは当時からしてもシンプルなものが多かったのですが、アイデア一つで面白い体験を提供できるんだということを知りました。
薄葉:私はゲームボーイアドバンスが最初ですね。初めて自分専用のゲーム機として買ってもらって、ポケモンをやっていました。本格的にゲームをやるようになったのは、新田川さんと同じくニンテンドーDSやPSPの辺りから。当時は社会現象にもなっていたモンスターハンターにドハマりして、毎日友達と集まってプレイしていましたね。バグを利用してゲームの裏側に行ったりするのが楽しくて、今思えば3DCGやプログラミングに興味を持つきっかけになっていたのかもしれません。小林さんはどうですか?
小林:初めて自分のゲーム機を買ってもらったのはゲームボーイでしたね。二人とは少し世代が違ってしまっていますが(笑)。でも手の平の中に別の世界が広がっていて、いつでもどこでもゲームを楽しめるというのは当時としては本当に衝撃的で、そこから一気にゲームの虜になったのを覚えています。
そういう経験もあったからか、今でも実際にその世界に入り込めるような体験ができるゲームが好きです。
ゲームから得た学びを仕事に活かす
小林:私も含め、ここにいる皆さんはたきコーポレーションというデザイン会社に勤め、それぞれデザインに関わる仕事をしているわけですが、ゲームから得た体験が今の仕事にどのような影響を与えていると感じますか?
新田川:私はグラフィックデザイナーとして活動していますが、個人的に好きなグラフィックのテイストは、ゲームがルーツになっていると感じますね。派手な動きがあったり、エッジが効いて格好良かったりっていうのが好みです。もちろん仕事では必ずしもそうしたテイストが求められるわけではありませんが、求められた時はテンションが上がります。
最近は街を歩いていても、いわゆる「ゲームっぽい表現」などはかなり一般化しているように感じますから、自分の好みを活かせるような仕事も増えてきそうですね。
薄葉:自分はARやインタラクティブコンテンツの開発をしているので、ゲームでの学びが仕事に直結しているように思います。
例えばリアルタイレンダリングの技術を活用した際は、いかに負荷を抑えられるかが課題になったのですが、その解決策として参考になったのがとあるゲームソフトで活用されている手法だったりしましたね。あと、体験そのものを楽しんでもらえるようなコンテンツを作ろうと考えた時に、自身のゲーム体験にはとても影響を受けていると思います。
視覚、聴覚、触覚に働きかけてユーザーに楽しく魅力的に感じてもらうためのエッセンスがゲームには詰まっていますよね。
小林:ゲームって体験デザインの塊なんですよね。すべてに意図があってデザインされている。それこそ、今みたいにUXという言葉が一般化する前から、ずーっと体験を作るということに取り組んでいるところに、すごくリスペクトを感じていて。
自分の業務を振り返ってみると、ゲームを通して体感してきたそうした要素が、プロダクト開発だったりWebサイト制作だったり、色んなシーンに活きている気がします。例えばユーザーに操作をどのように学習させるか、とか、ユーザーの行動を促す仕組みですとか。
UI一つとっても、ゲームではその世界観に合わせた特別なものが作られ、UIそのものが世界観を補助する役割も担っています。
一般的にUIは主張しすぎないのが良いと言われていますが、必ずしもそれが正しいということでもないのかな、そのプロダクトの特色を表現するUIは作れるんじゃないかな、など。これまでの体験が、自分のアイデアの幅を広げてくれているように感じますね。
体験を通じて感じる、今後求められること
小林:最後に、これまでの経験、そして今の仕事を通して、皆さんが今後やりたいことについて教えてください。
新田川:これまでに薄葉さんと一緒に案件でゲームを作ったことがありますが、それがとても楽しかったこともあり、そういう仕事は今後もやっていきたいと思いますね。そのためには、3DCGを作れるようになったりといった、持てる技術や知識の幅はどんどん増やしていきたいです。
また、知識や経験があるとその道の専門家とのコミュニケーションの質が上がり、より良いものが生まれると思っています。自分を成長させるだけじゃなく、たきコーポレーションには色んな分野のプロフェッショナルが揃っていますから、彼らと協力し合いながら、何か面白いことに挑戦していけたらうれしいです。
薄葉:最近業務においては、AIを積極的に活用しながら取り組んでいます。AI活用前に比べて効率良く開発などを進められて便利な反面、デジタルで完結する仕事はどんどんAIに置き換わるんだろうなと想像してしまいます。その上で、AIには生み出せない価値をどう作っていくか。それこそが、今後の私たちの大きな課題になってくるはずです。
グラフィックに強い広告制作会社に身を置くプログラマーとしては、デジタル×アナログの新しい価値を積極的に探っていきたいと思っています。
小林:これまでもさまざまなアプリやサービスのUI/UXデザインに携わらせていただきましたが、今後はより広い意味で体験全体をデザインできるようになりたいと思っています。実店舗とデジタルの連携によって体験をつくるとか、コンテンツを通してみんなが遊べる場のようなものを作るとか。画面の中だけでなく、ユーザーの実生活にきちんと根ざした体験を作れるかどうかに興味があるので、もしそういった機会があれば積極的に挑戦していきたいですね。
幸い、弊社には優秀なクリエイターが多くいますので、彼らと協力し合って、新しい体験を作り出すことに挑戦していきたいです。今回の企画展も、実現に際しては、本当に多くの方々のお力があってのことです。
そして企画展では、わたし個人としても、たくさんのクリエイターの方々が連綿と重ねてきた創意工夫を再確認していくような作業を通して、自分にもあった「人に喜んでもらえるものを作りたい」という原点を思い出させてもらったような気がします。
自分も気づけばすっかりおじさんになってしまったのですが(笑)、現状に満足するつもりはありません。薄葉さんも仰っていたように、クリエイティブを取り巻く環境は、良くも悪くも大きく変化していくでしょう。時代の変化が止まらないのであれば、前向きに楽しむしかありません。その上で、プロジェクトに関わる方々に、そしてその先にいるユーザーに、どんな価値が提供できるのかを、常に問いながら仕事をしていきたいと思っています。