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プロダクトデザインへの挑戦 ~グラフィックデザインとの違い~
アートディレクター
デザイナー
松本絹江
こんにちは。たき工房の松本絹江です。普段はグラフィックデザイナーとして広告やキャラクターグッズに携わっているのですが、その傍らでプロダクト制作にも挑戦してきました。今回は、たき工房として携わったプロダクト商品の紹介や、グラフィックデザインとの違い、プロダクトデザインならではの要素についてお話ししたいと思います。
松本絹江/
岡山県の広告代理店、都内のWEB制作会社を経て、2014年たき工房入社。広告やグッズ制作をメインでする傍らでプロダクトやパッケージデザインを積極的に行っている。ベジェ曲線が好きでアイコン開発やタイポグラフィが得意。
プロダクト制作に携わるきっかけ
もともとプロダクトやパッケージに興味があり、入社当時に社内であったプロダクト企画コンペに応募したのがきっかけで携わるようになりました。当時の業務はタレントを起用した交通広告がメインでしたが、配属されたチームが担当案件に支障がなければ自主制作しても良いところだったのと、参加すれば他部署の方と関わることができると思ったんです。実際そのつながりで個別にプロダクト案件の相談をいただくようになり、思い切って挑戦して良かったと思います。
さまざまなプロダクト制作に挑戦
受注案件としてはじめて携わったのは、ニトリさんと共同制作した「自然気化式ペーパー加湿器」です。自然気化の力を利用した加湿器で、市場にデザインされたものが少なく、たき工房にデザイン力を求められた案件でした。水を吸って気化させることから、植物をモチーフに鳥やてんとう虫など、遊びごごろを入れたデザインでECや店頭販売でも好評でした。
その次に携わったのが社内コンペで上位に選ばれて商品化された「紙でできた豆皿」です。お菓子のおすそ分けやコースター、さらにメモ書きができる食器+文具の新しい価値を生み出した商品です。食品OKなインクと紙を使用したことが明確になるよう「豆皿」のデザインにしました。最初はシンプルなデザインで進めていましたが、先輩から「もっと自分らしさを入れた方がいい」と言われ、友達にあげたい、自分が使いたいと思いながら作り直し、可愛いデザインに仕上がりました。ベストオブステーショナリー4位に選出され、外部からの取材を受けたり、たき工房のお年賀の商品に選ばれたりと反響も大きかったです。
他にも、東京手仕事プロジェクトに参加し、雛人形で知られる江戸木目込人形の真多呂人形さんと共同制作した「うつくしバレッタ」があります。日本の情景をイメージした4種展開で雛人形の帯を彷彿させる形は、髪を束ねるリボンをモチーフにしています。
節句以外の通年でも売れる商品開発ということで、チーム内で意見交換を重ね、形状から布選びまで何度も職人の元へ通い、伝統工芸の技術や美しさを活かした新しい伝統工芸品ができました。世代を超えて贈り継がれる存在になるとうれしいです。
ロゴやパッケージなど一貫したブランド制作にも携わることができ、中でもパッケージについては、コストを抑えたい、重ねて陳列した際に中身がわかるようにしたいといったご要望にお応えして、表裏に色を印刷し、折ることで中身がわかるようにしたところ職人にも喜んでいただけました。
プロダクトデザインならではの要素
これまでグラフィックデザインをメインとしてきた私からすると、プロダクトデザインだからこそ感じるデザインへの考え方の難しさや工程に対して苦労した点もあります。
まずデザインへの考え方について、グラフィックデザインでよくある広告では、掲載期間や場所が限られているため、いかに人目に留まるか、記憶に残るかを考えてデザインしていく必要があります。
一方プロダクトデザインは形あるモノとして残っていくので、流行に惑わされず普遍的な要素を押さえ10年20年後も愛されるようなデザインが求められます。ざっくりと言えば、グラフィックは「届けるまで」、プロダクトは「届けてから」を考えるといった感じでしょうか。どちらも初めに本質や価値、着地点をヒアリングすることが大事なので、とことん聞くようにしています。
またプロダクトの場合、触れるものなので形や質感もこだわります。パソコン上では綺麗に見えていても、実物化してみるとイメージと異なることもあり、場合によっては何度もモックを作って検証します。商品として量産する前に、素材やコスト、梱包や搬送に関すること、品質劣化を防ぐ工夫など越えて行かなければならない壁がたくさんあるんです。
例えば、ゼロックスさんとコラボした「ZIPANGU ポチ袋」は、特色インクのトナー印刷機を海外の方へ宣伝するために、シルク印刷では難しい細かい模様やグラデーションをつかって和柄をデザインした商品です。本体を折る以外が内制だったため、商品チェック→水引の紐の結び作業→接着→梱包→商品シール付け→発送までをたき工房の会議室で行いました。本体を折ってくださる業者の方にレクチャー資料を用意したりと、普段の業務ではしない工程が多く大変でした。
とはいえ、こうした苦労もプロダクトデザインならではの楽しさです。最初はできなかったことをできるに変えていく作業はとても魅力的ですし、その努力の先でお客さまの笑顔に出会えたときが一番うれしく達成感がありますね。
プロダクトデザインの経験から得たもの
グラフィックデザインとプロダクトデザインは思考の仕方が大きく異なりますが、だからと言ってそれぞれの経験や知識は決して独立したものではないと思います。私自身、プロダクトデザインの経験をしたことで、より広い視野を持ち、柔軟な姿勢でグラフィックデザインにのぞめるようになりました。デザインの本質は「課題を解決する」こと。その軸をぶらさず、これからも人の役に立つものを作っていけたらうれしいですね。
今後はさらにスキルを磨き、3DやARを活用してプロダクトデザインの幅を広げていきたいと思っています。たき工房でも「Instagram ARフィルター」という、AR技術とSNSのインスタグラムを組み合わせたサービスを提供しています。他にも、たき工房はグラフィックからCG、映像からブランディングまで、さまざまなジャンルのデザインに対応できる総合力が強みです。経験豊富な人材が多数在籍していて、優れた技術や知識を提供するのはクライアントにだけでなく、働く社員にとっても同様。なにかに挑戦するときに心強い環境なのではないでしょうか。これからも切磋琢磨しつつ、最新の技術を学びながら世の中に新しい価値を届けていきたいと思います。
※2023年3月1日より、社名を「株式会社たき工房」から「株式会社たきコーポレーション」に変更いたしました。
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