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ブランディングは必要か?|ブランディング探訪シリーズ (1)
情報や商品・サービスが溢れる現代、個人が一日で処理できる情報量には限りがあります。さらに各商品も平均化されており、その中で気になる一つを選んだり、良いものがどれかを判断したりするのも容易ではありません。
このような状況で、ブランディングはどのような役割を果たすのでしょうか?
また私たちや社会にとって、どのような意味を持つのでしょうか?
そしてなぜ、ブランディングは必要なのでしょうか。またブランディングとはどのように行うのが正しいのでしょうか。『ブランド』『ブランド戦略』『ブランディング』などと似た言葉が乱立しているはなぜか。ブランディングについて深く理解できているという方は、それほど多くはないかもしれません。
ここでは『ブランディング探訪シリーズ』として、ブランディングに関する基本的な情報をご紹介させていただきます。ぜひ最後までお読みいただき、ブランディングの意味や重要性について、興味を持っていただけると嬉しいです。
ブランディングの必要性について
ブランディングとは、企業や商品・サービスの価値を顧客に伝え、良いイメージを持ってもらうことを言います。このブランディングは、顧客の利益や社会的繁栄にも重要な役割を果たすため、顧客・企業・社会のすべてにとって大切な取り組みと言えます。まずは、ブランディングがもたらす3つのメリットについて見ていきましょう。
1.〈顧客(消費者・生活者)のメリット〉
■ 顧客の選択や判断を支援する
情報や商品・サービスがたくさんあると、顧客はどれを選べばよいのか迷ってしまいます。そこで役立つのがブランドであり、企業側がメディアやインターネットを通じて価値やメッセージを発信しブランドを確立することで、顧客が探す手間やリスクを減らし、選択や判断を支援することができるようになります。
■ 顧客の価値や満足度を高める
ブランドが確立された商品を持てば、機能的な価値(性能や品質など)を得るだけでなく、情緒的な価値(感動や満足など)も得ることができます。それらはライフスタイル、ステータス、社会的帰属感などにも影響し、顧客の自己表現を支えることにもつながるでしょう。また、ブランドと顧客の信頼関係が高まることで、顧客の忠誠心と満足度を上げることもできます。
2.〈企業のメリット〉
■ 企業の経営や商品・サービスの競争力を強化する
確立されたブランドは顧客から支持と信頼を獲得できるため、利益増や新規顧客の獲得、市場拡大などの効果が期待できます。これにより、企業の競争力を強化することもできるようになります。
3.〈社会的なメリット〉
■ 社会問題への取り組みや貢献を促進する
ブランディングは、企業の社会的な取り組みや貢献を促進させることもできます。顧客は商品・サービスだけでなく、企業の社会的な使命や価値観にも共感します。それに基づいて行動することで、社会的な影響力を生み出すことも不可能ではありません。
例えば、環境問題や人権問題に取り組む企業や商品は、ブランディングで顧客の共感と支持を得ることでブランド力を高めるだけでなく、社会や文化に対する新たな価値創造に貢献することもできます。
ブランディングは継続させることで、顧客・企業・社会の良い関係をつくる重要な役割を果たします。また、利益だけを目指すのではなく、顧客の満足度や幸福度への貢献、社会的な課題への解決策や提言、従業員のモチベーション向上など、社会の持続的な発展と改善に向けた積極的な役割を果たすことで、顧客やコミュニティ、社会全体の繁栄に寄与する可能性があります。
『ブランド』と『ブランド戦略』
これまではブランディングの必要性について述べましたが、ここからは『ブランド』『ブランド戦略』『ブランディング』という似た言葉の意味や違い、ブランディングのメリットや基本的な方法、長期的な維持と成長などについて紹介します。
『ブランド』とは
『ブランド』とは、顧客(生活者・消費者)が企業や商品・サービスについて持つイメージのことです。そのため、ブランドは企業が一方的に決めるものではなく、顧客がその価値を認めて共感することで成り立ちます。
人によって価値観は異なるため、全ての人に合わせるのではなく、特定の人に合う価値を提供することが大切。その人にとって価値が高ければ高いほど、ブランドへの満足度や忠誠心は上がるでしょう。さらにブランドは、競合他社との違いや価格設定にも影響します。ブランドを確立し、顧客に大きな価値を感じてもらえるようになるためには、『ブランド戦略』と『ブランディング』が必要かつ重要な課題となります。
『ブランド戦略』とは
一口にブランド戦略と言っても、その種類は多種多様ですが、一般的にはブランドの価値を高めることを目的に、ブランドをどういうものにするかを決めて、その目標や方向性などを計画・実行する過程を指して使われるケースが多くなっています。代表的なブランド戦略のステップの要素には、以下のようなものがあります。
■ブランド・アイデンティティ
ブランド・アイデンティティは、顧客に自社や商品などがどのように受け取られたいかの方法です。言い換えれば、企業が顧客からどのように見られ、どのようなイメージを持たれているか、それを決定する際に、競合他社と区別するためのブランドの価値や視覚的要素(ロゴ・ネーミング・ビジュアル・スタイルなど)を集約したもので、ブランド戦略を策定する際の概念です。これらは長期的ビジョンの核になります。
このブランド・アイデンティティを設定することで、ブランドに対する顧客の理解が深まり、購買拡大などに良い影響を及ぼすのはもちろんのこと、ブランドの方向性を明確に示すことによって社員の意識が統一されるインナーブランディングの効果も期待できます。さらは、人材採用などにもプラスに働かせることが可能です。
■ペルソナ
ペルソナとは、理想的なユーザーの1人を具体的に想像したモデルのことです。実際には存在しない人物ですが、具体的な人物像を描くことで、その人物がどのような問題や課題に直面するのか、どのような商品やサービスを選ぶのかなどをイメージしやすくなります。具体的な課題や商品ニーズがイメージできれば、商品やサービス改善のヒントが見つかるかもしれません。
また、ペルソナを設定するメリットはほかにも、社内やスタッフ間で詳細な人物像が共有されることでユーザーをイメージしやすくなり、社員同士で共通認識を持ちやすくなることが挙げられます。
■ターゲット
ターゲットとは、実際に存在する「集団」であり、ブランドの対象となる顧客層を属性で分けたグループです。例えば、ある化粧品メーカーが「20代の女性」をターゲットにした場合、それは「20代の女性」に商品を売りたいということ。
一方で「ターゲティング」という言葉がありますが、これはターゲットを決めることを指します。つまり、自社の商品やサービスを売りたい対象者やグループを特定するということです。例えば、化粧品メーカーが「20代の女性」をターゲットにするために「20代の女性」の属性やニーズ、行動などを分析することがターゲティングです。
ブランディングにおけるターゲティングとは、ブランド・アイデンティティやブランドのストーリーなどを共感する顧客層に伝え、ブランドのイメージや価値を高めてファン心理をつくることが目的です。そうすることで、長期的なブランドロイヤルティ(Brand Loyalty)や差別化を目指せるようになります。この長期的という部分が、短期的な効果を目指すマーケティングのターゲティングとは大きく異なるポイントです。
ターゲティングは、ブランドの対象となる顧客層を明確にし、そのニーズや課題、動機などを深く理解したうえで施策を行うことにより、ブランドが提供する価値やメリットを効果的に伝えることができるというメリットがあります。
しかし、ターゲティングだけでは十分ではない場合もあることを忘れてはいけません。ターゲティングによって導かれたターゲットユーザーは、あくまでも属性で分けられた集団。その中でも一人ひとりに個人差があり、その個人差を無視して商品やサービスを提供すると期待する効果が得られないケースもあります。そのため、ターゲティングを行うだけではなく、ペルソナも設定することが望ましいと言えるでしょう。
■ ポジショニング
ポジショニングとは、ブランドが市場の競合と比較してどのような位置づけになるかを決めることを言います。
〈市場・競合他社・顧客ニーズの分析〉
まずは、ブランドの市場を分析します。市場とともに競合他社、顧客のニーズなども分析します。市場分析では【3C分析(Customer[市場・顧客]、Competitor[競合]、Company[自社])】、PEST分析、SWOT分析などのフレームワークやポジショニングマップなどを使用するとよいでしょう。
〈ポジショニングステートメント〉
商品とサービスのポジションを明確に文章化します。文章化する際は、以下の要素を踏まえて文章を作るように心がけてください。
・ターゲット
・市場
・顧客のニーズや課題
・ブランドプロミス(顧客のニーズや課題解決のために提供するメリット)
・ブランドバリュー(ブランド・アイデンティティ、競合との違い)
■ ブランドエレメント
ブランドエレメントとは、ブランドのイメージやメッセージを伝えるための見た目や言葉の要素を指します。ブランドエレメントには、ロゴやカラー、フォント、キャッチコピー、ストーリーなどがあります。ブランド・コミュニケーションを決めることで、ブランドの知名度や魅力を高めることができます。
ブランドエレメントをつくるときは、ブランドを連想しやすく覚えやすい(忘れられない魅力)、表現がターゲットにとって好ましい、時代に合っている(適応範囲)、法律や社会的な基準を守っている、などを考えてつくることが望ましいでしょう。
■ ブランド・コミュニケーション
ブランド・コミュニケーションとは、ブランドが提供する価値やメッセージを顧客に伝えて、ブランドの認知や地位を高める活動を言います。顧客に良い印象を強く残すには、顧客との双方向性のあるコミュニケーションが望ましいでしょう。効果的な施策とわかりやすく魅力的なコンテンツの制作や配信を続けることで、ロイヤルティ (Loyalty)の向上や市場でのシェア拡大、マーケティングコストの削減、価格競争などに巻き込まれにくくなるなどのメリットがあります。
〈ブランド・コミュニケーションの施策〉
・外部施策
プロモーション活動(広告・PR・SPなど)で、顧客にブランドの魅力や違いを伝えます。その際、価値やイメージを伝え続けることが大切です。
・内部施策
従業員やスタッフに、ブランド・アイデンティティや方向性の理解と役割、責任を認識してもらうことも重要です。
〈メッセージ・コンテンツ戦略〉
・メッセージ設計
ターゲットに伝えたいブランドの価値とは何か、そのメッセージを伝えることでどのような感情が生まれるのかを明確にします。
・コンテンツ企画
ターゲットに伝えるためのコンテンツを企画し、ターゲットがよく利用するメディアなどを選んで、コンテンツ内容やトーン&マナーなどを決めていきます。
・コンテンツ制作
ターゲットに向けて魅力的でわかりやすい、効果的なコンテンツを制作・配信します。
■ ブランド・エクスペリエンス
ブランド・エクスペリエンスとは、顧客がブランドに触れたときに感じたり思ったりする体験を言います。ブランド・エクスペリエンスは、商品やサービスの品質、機能性だけでなく接客やサポートの質と早さなども関係します。また、顧客の感情や行動にも影響します。
ブランドに対する良い感情や印象を顧客に持ってもらうためには、商品やサービスだけでなく接客やプロモーションなども工夫して、ブランド・エクスペリエンスを高めることが大切です。
最後に、ブランド戦略策定の大まかな流れを以下にまとめましょう。
▷ブランド・アイデンティティ(顧客視点の存在価値)
▷ペルソナ(ターゲットユーザーの代表的な人物像)の設定
▷ターゲット(販売活動で狙う購買層)の設定
▷ポジショニング(市場における商品やサービスの立ち位置)の設定
▷ブランドエレメント(ネーミングやロゴ)の制作
▷ブランド・コミュニケーション(ブランドの価値を伝える活動)
▷メディア(媒体)やチャネル(ルート)の決定
▷プロモーション(認知・購買につなげる活動)の制作
▷コンテンツ(自社の商品・サービス情報)の制作
▷メッセージや訴求内容の決定
▷ブランド・エクスペリエンス(顧客体験)の実施
「ブランド戦略」は「ブランディング」の中に位置し、ブランディングの基礎になります。今回紹介した各施策を参考にしつつ、自社に最適なブランディングの実現を目指していきましょう。
※そのほかブランディングに役立つ、以下の記事も一緒にご覧ください。
・ブランディング探訪シリーズ 第2回 ブランディングとは
(ブランディングの基本要素とその意義)
・ブランディング探訪シリーズ 第3回 ブランドアーキテクチャーの最適化とは
(ブランドの序列を整理し、価値が高まるように各ブランドを管理する戦略)
・ブランディング探訪シリーズ 第4回 ブランディング戦略の長期的な視点
(成長につながるブランドの築き方)
・ブランディング探索シリーズ 第5回 パーパスブランディングについて
(本質的な存在価値を追求するブランド戦略のメソッド)
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