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ブランディングとは?|ブランディング探訪シリーズ (2)
前回のシリーズVol.1では『ブランディングの必要性とは』というテーマで、『ブランディング』を理解するために必要な『ブランド』と『ブランド戦略』の考え方をご紹介しました。今回は、シリーズの核となるブランディングについて、ブランド構築の基本要素とその意義、方法などをご紹介します。
『ブランディング』とは
(ブランディングの基本要素とその意義)
ブランディングとは、企業や商品・サービスの価値を顧客に認識してもらい、ブランドに対する良いイメージを持ってもらうことを言います。ブランド戦略を実行するための具体的な手順やブランドをつくり上げ、強化させる作業全般を指して使われるケースもあります。
ブランディングにおいて特に重要となる「どんなイメージを持ってもらいたいか」という部分については、ブランド戦略に基づいてブランディング(ブランド育成)していかなければなりません。そのため、ブランド戦略とブランディングは一体的であり、そのどちらか一方でも欠けては効果が少なくなります。
ブランディングの手法としては、メジャーなものの一つに、社会的な視点で企業や商品が持つ使命感や根本的な存在意義(パーパス)を示し、それを顧客に伝えることで感情的な共感や信頼を得ながら認知拡大につなげる「パーパスブランディング」があります。パーパスブランディングでは、パーパスをブランド戦略の中心に置いて、自社の存在意義を世間に伝えていきます。
その他のブランディング手法では、企業や商品が持つ歴史や特長などを物語(ストーリー)の形で表現し、それを顧客の心に訴求することで、感情的な共感や信頼を得る「ブランドストーリー戦略」や自社メディアを利用した「メディアブランディング」、YouTubeなどを筆頭とした動画コンテンツによるわかりやすい訴求力でインプレッションを高める「動画ブランディング」、SNSの拡散力を利用した「SNSブランディング」などがあります。
ブランディングの種類について
ブランディングによって自社や商品に対する固有の価値やイメージを顧客に持ってもらうことは、言い換えれば顧客の心に印象を刻み込み、感情を誘うことと言えます。そうしたブランディングには、以下のメリットが期待できます。
・顧客のロイヤルティ(Loyalty)とリピート率の向上
・競合他社との差別化と商品・サービスのプレミアム化
・新規顧客の獲得と市場拡大
・社会的信頼性と影響力の向上
・経済的利益の拡大
また、ブランディングを行う対象は必ずしも顧客だけに限られるわけではありません。採用対象者やビジネスパートナー、従業員など企業が関わる関係者に向けて行う場合もあります。代表的なブランディングの種類は以下の通りです。
■ アウターブランディング
アウターブランディングは、商品・サービスブランディング、企業・事業ブランディング(BtoBブランディング、BtoCブランディング)など、顧客/取引先企業/株主といった外に向かって行うブランディング全般を指します。
■ インナーブランディング
インナーブランディングは、アウターブランディングの逆で、自社の従業員やスタッフに対して行うブランディングです。高品質で魅力的な商品開発をするのは「人」であり、特にサービスに関しては人への依存度が非常に高いため、自社の従業員へブランディング(研修)を行うことで、モチベーション向上や企業文化の向上につなげることができます。
■ 採用/育成ブランディング(インナーブランディングの一部)
採用/育成ブランディングはインナーブランディングの一種で、人や組織づくりを目的としたブランディングです。採用ブランディングでは、自社の魅力を求職者に伝え、優秀な人材の確保と定着につなげることを目的とします。また、育成ブランディングでは社員の成長と活動を支援することで、社員のモチベーション・エンゲージメントの向上を図ります。
これらの各ブランディングを成功させるためには、共通して以下のようなポイントが重要です。
・ターゲット目線でのブランド戦略の設計
・社内外に一貫性のあるブランドメッセージの発信
・競合他社との違いを踏まえたブランドコンセプトの開発
・人の心に刻むための継続的なブランディング
ブランディングの基本ステップ
ここからは、ブランディング実行に際しての基本的なステップについて見ていきましょう。ブランディングの各ステップは、ブランド戦略において決めたことが前提となります。根幹であるブランド戦略に基づき、何が必要になるのかを一つひとつ具体的にイメージしていかなければなりません。
■ ブランド・アイデンティティ
ブランド・アイデンティティは、顧客に自社や商品などがどのように受け取られたいかの方法です。言い換えれば、企業が顧客からどのように見られ、どのようなイメージを持たれているか、それを決定する際に、競合他社と区別するためのブランドの価値や視覚的要素(ロゴ・ネーミング・ビジュアル・スタイルなど)を集約したもので、ブランド戦略を策定する際の概念です。これらは長期的ビジョンの核になります。
ブランド戦略で設定したブランドの本質的な価値観・目的・ビジョンをさらに展開させ、ブランドにどんな印象を持ってほしいのか、何を大切に、何を目指すのか、などを決めます。
具体的には「自分たちは何者なのか」「何がしたいのか?」「何ができるのか?」「何が違うのか?」「何が良いのか?」「何が大切か?」「何が目標か?」「何が理想か?」「何が使命か?」「何が存在意義か?」「何が価値なのか?」「何がビジョンなのか?」などが挙げられます。
■ ターゲット
次に、「誰に向けて伝えるのか」「誰に届けるのか」「誰に買ってもらうのか」「誰に使ってもらうのか」「誰に好まれるのか」「誰に支持されるのか」といった、自社がターゲットにすべき顧客について考えます。
ここでは、ブランド戦略で選定したターゲットを確認したうえで、ターゲットのニーズ・動機・課題などをさらに分析し、購入の可能性が高いターゲットを明確にしなければなりません。さらにブランドの方向性や、ターゲットに合ったブランドコンセプト・メッセージを練り直し、同時に最適なコミュニケーション方法についても決めていきます。
■ ブランドコード
自社が目指すべき姿、ターゲットとする顧客を決めたら、次に「どう見せるのか」、「どう聞かせるのか」「どう感じさせるのか」ということを考えます。ブランド戦略で定めたブランドエレメントを発展させて、ロゴ・カラー・フォント・キャラクター・アイコンなどの視覚的な要素を統一させメッセージを伝えることで、ブランドの認知向上や差別化を促進させることができます。
■ スタイルを決める
最後に「どう言うのか」「どう伝えるのか」「どう話すのか」ということを考えます。トーン&マナー・キャッチコピー・スローガン・ストーリーなど、発信する情報やコンテンツの形式を決めることで、一貫性のあるブランドの個性や魅力、特徴を伝えることができるでしょう。
以上がブランディングの基本的なステップです。ただし、これらは一度で完結するものではありません。ブランディングの効果を最大限に発揮させるためには、定期的に検証・改善を続けることが必要です。顧客に対して与えたい印象や感情を育てていくことで、はじめてブランドを構築することができるのです。
ブランド・エクイティの最大化
(ブランドコンセプトから広がる認知とファンの増加)
これまでブランド構築について述べてきましたが、ここからは構築が進むと何が起こるのかについて考えていきましょう。
ブランドを資産として価値を高めていくという考え方は、1980年代後半にアメリカで生まれました。
「ブランド・エクイティ」とはブランドが持つ資産価値のことで、ブランドという形のないイメージを資産として評価し、その評価を高めるために育成や投資を行っていく考え方です。これは、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校 ハース経営大学院名誉教授デイヴィッド・A・アーカー博士が『ブランド・エクイティ戦略』の著書などで紹介されています。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11950.html
(ブランド・エクイティ『MBA用語集』より)
このブランド・エクイティという考え方は情報化社会の発展、グローバル化、商品の価格競争、消費者のニーズや価値観の多様化、個性のライフスタイルの重視といった社会状況の要因から生まれました。ブランドを資産として評価し、それを高めていくことのメリットには、以下のようなものがあります。
〈ブランド・エクイティのメリット〉
・ブランドの知名度により顧客が安心できる
・ブランドのイメージにより顧客が優越感を得られる
・ブランドを指名して購入する顧客が増えることで売上が向上する
・価格競争の巻き添えになりにくい
・顧客がほかの顧客に勧めてくれることで新規顧客が獲得できる
ブランド・エクイティを構成する要素はさまざまですが、代表的なものに「アーカーモデル」と「ケラーモデル」という概念があります。
https://www.nttcoms.com/service/nps/column/20230323/
(NTTコム オンライン:『ブランドエクイティの意味とは?高めるメリットや測定方法・企業事例を解説』参照)
〈アーカーモデル〉
・ブランド認知:ブランドがどれくらい知られているか
・ブランド連想:ブランド名で消費者が思い浮かべるイメージ
・ブランドロイヤルティ(Brand Loyalty):ブランドへの忠誠度や愛着度
・知覚品質:ブランドが持っている品質イメージ
・その他のブランド資産:特許や商標権などの知的財産権や独自技術など
〈ケラーモデル〉
・ブランドサリエンス:ブランドがどれくらい目立っているか
・ブランドパフォーマンス:ブランドが提供する商品やサービスの性能と機能
・ブランドイマジナリー:ブランドが持つ社会的・心理的なイメージ
・ブランドジャジメント:消費者がブランドに対して持つ評価や感情
・ブランドフィーリング:消費者がブランドに対して感じる感情的な反応
・ブランドレゾナンス:消費者とブランドの関係性や共感度
それぞれのモデルにおいて語られるブランド・エクイティの構成要素を見ていくと、ブランドを高めていくために欠かせないものとしては、以下の内容を挙げることができます。
・ブランドコンセプトの確立
・ブランドコンセプトに準じた商品やサービスを提供する
・ブランドコンセプトをプロモーション活動などでしっかり的確に伝える
・顧客満足度や口コミを高める施策を行う
・顧客との関係性を深めるコミュニケーション施策を行う
ブランディング探索シリーズ第2回では、ブランディングの基本要素とその意味について詳しくお話ししました。より深いステップや具体的な手法などについては次回以降でお話ししています。※そのほかブランディングに役立つ、以下の記事も一緒にご覧ください。
・ブランディング探索シリーズ 第1回 ブランディングの必要性とは
(ビジネスに欠かせない要素)
・ブランディング探訪シリーズ 第3回 ブランドアーキテクチャーの最適化とは
(ブランドの序列を整理し、価値が高まるように各ブランドを管理する戦略)
・ブランディング探索シリーズ 第4回 ブランディング戦略の長期的な視点
(成長につながるブランドの築き方)
・ブランディング探索シリーズ 第5回 パーパスブランディングについて
(本質的な存在価値を追求するブランド戦略のメソッド)
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