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前回のシリーズ Vol.4では、ブランディング戦略の長期的な視点でブランドの成長につながる大切なことと、社会の変化がブランディング戦略に与える影響について、お話ししました。今回は、企業の存在意義が重視される現代では有効なブランディングの手法の「パーパスブランディング」をご紹介します。企業は独自の価値を生み出しビジネスを安定させるとともに、従業員の意欲を向上にも効果的です。

パーパスブランディングについて

(本質的な存在価値を追求するブランド戦略のメソッド)

パーパスとは、企業がなぜ存在するのか、どんな価値を提供するのか、どんな社会を目指すのか、という根本的な理念や目的を言語化したものです。
パーパスとは、社員や顧客、社会からの共感と信頼を築くために重要な要素ですので、さまざまな手法のブランディング戦略からパーパスブランディングを取り上げました。

ここで取り上げるのは、一般的にある基本的なパーパスブランディングです。
当社では、独自のメソッドによる「パーパスブランディング」を行っています。
ぜひ以下のサイトもご参考にしてみてください。
https://igi.taki.co.jp/purpose

パーパスブランディングとは
パーパスブランディングとは、社会における自社の存在意義(パーパス)を世間に認知してもらい、共感を呼ぶことで企業ブランディングにつなげる手法です。

自社の存在意義(パーパス)を明確に示すことで、
・社員が仕事に対するモチベーションや誇りを高めることができる
・顧客や取引先が自社および自社の商品とサービスに対するロイヤルティ(Loyalty)や満足度を高めることができる
・消費者や投資家が自社および自社の商品・サービスに対する信頼感や評価を高めるなどの効果が期待できる

パーパスブランディングの具体的な方法
パーパスブランディングでは、
・自社の存在意義(パーパス)をウェブサイトや広告などで明確に伝える
・社会貢献活動やCSR活動などで、自社の存在意義(パーパス)を実践する
・商品とサービス開発および提供方法などでも自社の存在意義(パーパス)を反映させる
などの方法がある

パーパスブランディングの事例
実際にパーパスブランディングで成功した企業も数多くあります。
例えば、

味の素株式会社
「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します。」
出典元:
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/recruit/fresh/introduction/philosophy.html

株式会社ナイキジャパン
「スポーツの力で世の中を前進させる。全ての人が健康で平等に競える、公平でサステナブルな未来を信じて」
出典元:https://www.smo-inc.com/blog/learnings/brand-stories/2212

ソニー株式会社
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」
出典元:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/

東京海上ホールディングス株式会社
「お客さまや地域社会の“いざ”をお守りすること」
出典元:https://www.tokiomarinehd.com/company/management/model/

ネスレ日本株式会社
「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」
出典元:https://www.nestle.co.jp/csv/japan

三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
「お客さまや社会に寄り添い、信頼を繋ぎ、金融のチカラで豊かな未来を切り拓く」
出典元:https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0084-purpose-kesei-case.html

株式会社ユニクロ
「服の領域で社会を支えるインフラになる」
出典元:https://www.smo-inc.com/blog/learnings/brand-stories/1406

ユニリーバ・ジャパン株式会社
「サステナブルな暮らしを”あたりまえ”にする」
出典元:https://www.unilever.co.jp/planet-and-society/

などが、代表的なパーパスブランディングの実例です。

〈パーパスブランディングの目的〉
パーパスブランディングの目的は、社会の発展に貢献する企業であることをアピールし、取引先や顧客、投資家、さらには一般の消費者までを含めた社外の人々から、幅広く共感や信頼を獲得することです。

企業やブランドのイメージが高まれば、それに伴い商品やサービス、ブランドの価値も向上します。ブランド価値を向上させることで、企業やブランドの支持者やファンを増やせれば、結果的に経営を安定させることができるようになります。さらにパーパスブランディングには、従業員に自社で働くことの社会的な意義を認識させる効果もあります。

パーパスを理解すると、従業員は自社に誇りを感じ、仕事に対するモチベーションが高まります。その結果、業務効率と生産性が向上し、競争力もアップし、企業体質の強化につながるのです。

〈パーパスブランディングのメリット〉

 顧客からの信頼度やロイヤルティ(Loyalty)が高まる
・自社が社会に与える価値や影響を伝えることで、信頼度やロイヤルティが 高まる
・顧客は自分の価値観や思想に合う企業やブランドを好み、応援や推奨する傾向がある
・商品やサービスだけでなく企業の魅力を伝えることで、顧客とより深い関係性が築ける

 従業員からのエンゲージメントが高まる
・自社が社会に貢献する目的を示すことで、従業員からのエンゲージメントが高まる
・従業員は自社に誇りを感じ、仕事に対するモチベーションが高くなる
・高いモチベーションは業務効率と生産性が向上し、競争力と企業体質の強化につながる

 投資家からの評価が高まる
・自社が持続可能な経営を示すことで、投資家からの評価が高まる
・近年はESG[環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)]投資などが注目されており、企業は利益の追求だけでなく社会的責任を果たすことで支持を得る
・自社がESGに対してどのように取り組んでいるかを伝えることができるため、投資家から信頼を得られやすくなる

〈パーパスブランディングのデメリット〉

 パーパスと実態に乖離(かいり)がある場合は逆効果
・自社が掲げるパーパスを世間に発信することで共感を得ようとしますが、そのパーパスと実態に乖離がある場合は逆効果です。例えば、「環境保護」や「人権尊重」などをパーパスとして掲げていても、実際には環境破壊や人権侵害などを行っていた場合は消費者および社会から強い批判を受けることになります。

また、「利益追求」や「競争優位」などを隠し「社会貢献」や「顧客満足」などを装っていた場合も不誠実であると見なされます。パーパスブランディングでは、自社の真実性と一貫性が重要な課題となります。

 パーパス設定や浸透に時間がかかる
・自社独自のパーパスを設定し、それを社内外に浸透させる必要がありますが、パーパス設定は単純な作業ではありません。設定には深い洞察や議論が必要であり、相当の時間がかかることになります。

・パーパスが競合他社とほぼ同じまたは似ている場合は差別化が難しくなります。例えば、「お客様第一」や「社会貢献」などは多くの企業が掲げているパーパスですが、それだけでは他社との違いは出せません。パーパスブランディングでは、自社の強みや特色を生かしたオリジナリティの高いパーパスを設定する必要があります。

〈パーパスブランディングの戦略の手順〉

1.自社の現状分析
パーパスブランディングを行う前に、各調査や自社の現状分析を行います。
・自社の強みと弱み、商品やサービスの特長や価値、競合他社との比較を分析
・ターゲット層や市場動向などを調査
・自社の経営理念やミッション、ビジョンなどの理念体系を確認

2.パーパス設定
自社の現状分析に基づいて、自社独自のパーパスを設定します。
・社会的な意義や価値を明確化
・自社の強みや特色を生かす
・競合他社との差別化
・シンプルでわかりやすい表現の実現
・具体的で実現可能な内容にする

3.パーパス浸透
設定したパーパスを社内外に浸透させます。
・社内ではトップダウンでコミュニケーションや教育を実施
・社外では広報やマーケティングなどでパーパスを発信し、共感と信頼を得る
・パーパスに沿った商品開発やサービス提供、CSR活動などを実践
・フィードバックや評価を受けて改善

ブランディングパートナーの選び方

(成功を支える信頼性と相性のポイント)

最後に、ブランディングパートナーの選び方について、ポイント例をお伝えします。

〈パートナー選定〉
・自社の業種や規模、ニーズに合ったパートナーを選ぶことで、効果的なブランディングが可能です。
・ブランディングパートナーの得意分野と実績をチェックしましょう。
・ブランディングパートナーの提案内容や担当者の対応も重要です。
・自社のことを本気で理解してくれるのだろうか、信頼できるのか、コミュニケーションがスムーズにできるのか、などを見極めます。

〈契約関係〉
・契約内容を書面で明確にすることが大切です。料金や期間、成果物や権利関係などを具体的に記載し、双方で署名・捺印をすることで、後からトラブルが起きないようにしましょう。

・契約内容には、キャンセルや変更の条件および費用等も含めることが重要です。プロジェクトの途中でキャンセルや変更が発生した場合、どのように対処するのかなどを事前に決めておくことで、追加料金や違約金などの問題を避けることができます。

・契約内容には、成果物の品質や納期等に関する保証も含めることが理想です。成果物の品質や納期が契約通りでなかった場合、どのような措置を取るかなどを明記しておくことで、返品やクレームを防ぐことができます。

〈法律関係(リーガルチェック)〉
・ブランディングパートナーは、広告法規への配慮も必要です。景品表示法や薬機法などの法律に違反や、表現や内容には気を付けましょう。

〈費用関係〉
・ブランディングパートナーへの費用は、事前に見積依頼を行い、契約内容が変化する場合もトラブルを避けるため都度、見積を依頼しましょう。
・予算や期間、成果物および権利関係などを事前に明確にしておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

※そのほかブランディングに役立つ、以下の記事も一緒にご覧ください。

 

・ブランディング探索シリーズ 第1回 ブランディングの必要性とは
(ビジネスに欠かせない要素)

・ブランディング探索シリーズ 第2回 ブランディングとは
(ブランディングの基本要素とその意義)

・ブランディング探索シリーズ 第3回 ブランドアーキテクチャーの最適化
(ブランドの階層を整理し、ブランドポートフォリオを最大限活用する方法)

・ブランディング探索シリーズ 第4回 ブランディング戦略の長期的な視点
(成長につながるブランドの築き方)

 

 

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