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マーケティング戦略の基礎知識|マーケティング戦略シリーズ (1)
近年、ますます競争が激しくなっているビジネス界。群雄割拠の様相を呈するこの世界で成功するためには、単に優れた商品やサービスを生み出すだけでなく、それらを魅力的に届けるための手段も用意しておかなければなりません。そして、その手段の一つとして欠かせないのが、巧妙なマーケティング戦略。本章では、マーケティングの基本的な理念と重要性について詳しく探っていきましょう。
マーケティングとは
マーケティングと聞いてイメージしやすいのは広告や販売活動ですが、それだけを指すのではなく、市場分析や競合分析、さらにはそれらをもとにした商品企画や開発、顧客との関係構築などもマーケティングの一環と言えます。
マーケティングの定義は多岐にわたりますが、一般的には「顧客のニーズを満たすために、適切な商品やサービスを提供し、その魅力を効果的に伝え、顧客との価値を創造する活動」という戦略的な手法です。そのためマーケティングは、単なる広告や宣伝だけでなく、市場調査、販売戦略、価格設定、顧客対応など、さまざまな要素を組み合わせながら戦略を構築しなければなりません。
これらの活動を総合的に行うことで、顧客のニーズを満たし、商品やサービスの向上や売上の拡大を図ることができます。したがって、マーケティングを一言で表すと、「売れる仕組みを作ること」と言えるでしょう。
また、マーケティングは、顧客と企業の双方にとって「価値のある関係を構築すること」とも言えます。顧客のニーズを理解し、それに応える商品やサービスを提供することで、顧客の満足度を高め、顧客と企業の信頼関係を築くことができます。
このように、マーケティングは、企業の利益を追求するだけでなく、顧客の満足度を高め、顧客と企業の双方にとって価値のある関係を構築することにもつながる活動です。
マーケティングの歴史 【古代~中世】
マーケティングの歴史は紀元前まで遡ります。古代のマーケティングは主に口コミや伝承によって行われていました。古代エジプトでは、商人が商品の特徴や価格を記した看板やパンフレットを作成し市場での販売に役立てていました。古代ローマやギリシャ時代には既に、市場での取引に広告の要素が見られ、祭りや競技会などの行事で商品の展示や販売が行われていました。
中世では、商工業の発達に伴いマーケティングはより発展し、特に商工業者間で結成された各種職業組合の「ギルド」はマーケティングを促進する重要な役割を果たしました。
ギルドは、商人の集団であり、商品の品質や価格の基準を定め、商人たちが守るべき規則を制定していました。また、ギルドは、市場や祭りなどの行事を開催して、商人たちの交流を促進していました。
〈ギルドの役割〉
・商品の品質や価格の基準を定めることで、消費者の信頼を獲得
・商人たちの交流を促進することで、マーケティングに関する知識やノウハウの共有
・市場や祭りなどの行事を開催することで、商品の宣伝効果を高める
具体的な例としては、中世ヨーロッパの織物ギルドが挙げられます。織物ギルドは、品質の高い織物を製造し、消費者の信頼を獲得しました。また、ギルドは、市場や祭りなどの行事で、織物の展示や販売を行っていました。これにより、多くの消費者に織物の存在を知ってもらい、販売を促進しました。
このように、中世のギルドは、マーケティングの基礎となる仕組みを構築し、マーケティングの発展に貢献しました。
マーケティングの歴史 【近代~現代】
(近代)
19世紀後半~20世紀前半になると産業革命によって大量生産が可能となり、マーケティングは新たな展開を見せることになります。マーケティングの存在感が強まってくるのは産業革命以降。製品の差別化やブランド戦略などの手法が用いられるようになり、大量生産が進む中で商品の選択肢が増え、消費者のニーズを把握してマーケティングを行うことが重要視されるようになりました。
〈近代マーケティングの特徴〉
・大量生産/大量消費
産業革命によって、大量生産が可能となり、企業はより多くの製品をより安価に提供することができるようになりました。
・製品差別化の重要性
大量生産によって、類似した製品が市場に多く出回るようになりました。そのため、企業は、製品の差別化により競合他社との差別化を図ることが重要になっていきました。
・ブランド戦略の重要性
製品の差別化を図るために、ブランド戦略が重視されるようになりました。(ブランド戦略とは、自社の製品やサービスを他社製品やサービスと区別するための戦略です)
・マーケティングの概念の確立
近代においては、マーケティングの概念が確立されました。そのマーケティングにより、企業が顧客のニーズを満たし、収益を上げることを目的とした活動を行っていきました。
近代マーケティングの代表的な事例としては、以下のようなものが挙げられます。
・フォードの社T型フォード
フォード社が発売したT型フォードは、大量生産によって低価格で提供されたため、多くの消費者に受け入れられたことで、製品差別化の代表的な事例として知られています。
・コカ・コーラのブランド戦略
コカ・コーラは、世界的なブランドとして知られています。コカ・コーラのブランド戦略は、消費者に強いロイヤリティを築くことに成功しました。
〈近代マーケティングの流れ〉
・マーケティング1.0:製品中心のマーケティング
1900年頃から1960年代までの時代です。この時代は、大量生産・大量消費の時代であり、企業は消費者のニーズを満たすために、品質や価格を重視した製品開発を行いました。
・マーケティング2.0:販売中心のマーケティング
1960年代から1990年代までの時代です。この時代は、消費者の選択肢が増えたことで、企業は製品を売り込むために、広告や販売促進などの販売活動を重視しました。
・マーケティング3.0:顧客中心のマーケティング
1990年代から2010年代までの時代です。この時代は、消費者の価値観が多様化したことで、企業は顧客のニーズや期待を理解し、顧客との関係を構築することに重点を置くようになりました。
・マーケティング4.0:体験価値のマーケティング
2010年代以降の時代です。この時代は、インターネットやSNSの普及により、消費者は商品やサービスの情報を簡単に入手できるようになり、企業は消費者に新たな価値や体験を提供することに重点を置くようになりました。
このように、近代において、マーケティングは新たな展開を見せ、企業の経営に欠かせない要素となりました。
(現代)
20世紀後半以降。この時代は、情報技術の進歩により、マーケティングはさらに新たな展開を見せていきます。インターネットやSNSなどのデジタルメディアを活用したマーケティングが主流となり、消費者の行動や心理を分析してマーケティングを行うことが重要になっています。
〈現代マーケティングの特徴〉
・マーケティング5.0:データドリブン・パーソナライズ・共創のマーケティング
マーケティング5.0は、2017年ごろから提唱され始めたマーケティングの概念です。マーケティング4.0は、体験価値のマーケティングですが、マーケティング5.0は、その体験価値をさらに高めるために、デジタル技術を活用します。また、顧客一人ひとりのニーズに合わせたパーソナライズされたマーケティングを行うことで、より深い顧客とのつながりを目指します。さらに、企業と顧客、社会の共存・共栄を目指すことで、持続可能な社会の実現にも貢献します。特徴は以下の通りです。
・デジタルメディアの普及
インターネットやSNSなどのデジタルメディアが普及したことで、消費者は、商品やサービスの情報を簡単に入手できるようになりました。これにより、企業はデジタルメディアを活用し、消費者に対して効果的にマーケティングを行うことが重要になりました。
・消費者の行動や心理の変化
情報技術の進歩により、消費者の行動や心理は大きく変化しています。消費者は、インターネットやSNSを活用し、自ら情報を集め、商品やサービスを選択するようになりました。そのため、企業は、消費者の行動や心理を理解し、マーケティングを行うことがさらに重要になりました。
・マーケティングの多様化
デジタルメディアの普及や消費者の行動や心理の変化により、マーケティングは多様化しています。企業は、自社の製品やサービスに合ったマーケティング手法を組み合わせて、効果的にマーケティングを行うことが重要になっています。
現代のマーケティングの代表的な事例としては、以下のようなものが挙げられます。
・ソーシャルメディアを活用したマーケティング
企業は、ソーシャルメディアを活用し、消費者と直接コミュニケーションを図り、マーケティングを実施しています。
・ビッグデータやAIを活用したマーケティング
企業は、ビッグデータやAIを活用して、消費者の行動や心理を分析し、マーケティングを実施しています。
・パーソナライズされたマーケティング
企業は、消費者の属性や行動を分析して、パーソナライズされたマーケティングを実施しています。
このように、現代においては、マーケティングは新たな展開を見せ、企業の経営に欠かせない要素となっています。今後も、社会や技術の変化に伴い、マーケティングはさらに進化していくと考えられます。
マーケティングの巨人
上記の歴史のようにマーケティングはより戦略的な要素を持つようになり、顧客の心理や行動に着目したアプローチが重要とされるようになっていったのです。
このようにマーケティングは、古代から現代に至るまで進化を続けてきた概念であり、その歴史には多くの著名な人物が関わってきました。その中でも特に有名なのが、マーケティングの世界を広げ、高め、深めたと言えるフィリップ・コトラー教授です。
コトラー教授は、シカゴ大学で経済学の修士号、マサチューセッツ工科大学で経済学の博士号を取得しました。その後、ハーバード大学で数学、シカゴ大学で行動科学の研究活動に従事し、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の特別教授も務めました。
マーケティングの基本的な概念やモデルを体系化し、多くの著書や論文で発表し、社会的責任や倫理、環境などの観点からマーケティングの役割や目的を考える先駆者でもあります。現代マーケティング界の第一人者として「マーケティングの神様」、「マーケティングの父」などとも呼ばれ、世界中から尊敬されています。
コトラー教授は1931年に生まれ、マーケティング分野における世界的な権威としてその名を刻みました。著書『マーケティング・マネジメント』は、初版が1967年に発行され、その後も多くの改訂版が出版されています。この著書は、マーケティングにおける基本的な理念や枠組みを体系的にまとめたものであり、経営学やビジネス教育の教科書として世界中で使用されています。
コトラー教授はマーケティングにおいて、広告や販売だけでなく、顧客のニーズを理解し、それに合った戦略を展開することの重要性を強調しています。彼の提唱する「顧客志向」という概念は、企業が顧客の視点に立って商品やサービスを提供し、顧客価値を最大化することを指しており、このアプローチ方法は、今日のマーケティング戦略の基盤として、多くの企業に取り入られています。
〈主な偉大な業績〉
・マーケティングの基本概念や理論を体系化し、広く普及させました。コトラー教授の著書『マーケティング・マネジメント』は、世界中のビジネススクールや企業で使われています。
・マーケティングの4P(製品、価格、販売促進、流通)に加えて、6P(世論、政治力)や7P(人、プロセス、物的証拠)という拡張されたフレームワークを提唱。これらは、企業が市場に対応するための有効なツールとなっています。
・マーケティングの社会的責任やグローバル化など、マーケティングの新たな課題にも積極的に取り組んできました。これらの取り組みは、マーケティングの概念や理論をさらに進化させ、マーケティングをより効果的な経営手法へと発展させる上で重要な役割を果たしています。
・営利組織だけでなく、非営利組織や公共機関におけるマーケティングの重要性や方法についても研究。また、ソーシャル・マーケティングという概念を提唱しました。(これは社会的な問題に対して行動変容を促すためのマーケティング手法です)
・マーケティングの実践者や教育者としても活躍。コトラー教授は、多くの企業や政府機関にコンサルティングやアドバイスを行いました。また、世界各地で講演やセミナーを行っています。また、多くの賞や栄誉を受賞しています。例えば、インドネシアでは切手に肖像が描かれました。
フィリップ・コトラー教授は、マーケティングの理論や実践に革命をもたらしただけでなく、そのアイデアは時代を超えてなお影響を与え続けており、マーケティング分野の発展に大きく寄与した、マーケティングの巨人です。
続きは以下をご覧ください。
・第6章 現状の問題点ならびにビジネス機会の洗い出しと課題設定
(ポジショニング設定/ターゲット設定/コンセプト設定)
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